前回のあらすじ
先輩から教わった必勝法で競艇に挑むも、見事に外れ落胆する二人
その時、ふわっと現れた謎の女は、二人の前で800万の舟券を的中させる
驚きとざわめきが入り混じる中、二人は弟子入りを懇願するが、条件を突きつけられる
果たして二人は弟子入り条件をクリアできるのかー
反省会
レースが終わった帰り道
空腹に耐えかねた二人は、東武東上線・成増駅近くのファミレスへと駆け込んだ
足早に注文を済ませると、ドリンクバーでそれぞれコーラとアイスティーを手に、
席に戻り話し始めた
「来月までに持ち金を必ず倍にするって、啖呵切っちゃったけど、どうっすかぁ」
宏がアイスティーをすすりながら、少し肩をすくめてつぶやく
「だなぁ、必勝法、本当にダメなんかな……」
智樹はコーラを一気に飲み干し、眉間にしわを寄せた
宏はノートとペンを取り出し、威勢よく切り出す
「検証してみようぜ、必勝法!」
「おう、そうだな!」
宏がペンを構えると、智樹もうなずきながらスマホを取り出し、競艇公式を開く
「どうする、どこから見る?」
「何回か過去の結果を見れば、傾向くらい分かるんじゃないか?」
「じゃあ、8月6日から今日までのレースで試して見るか」
二人は静かに、でも淡い期待を寄せて検証を始めた
レース結果を読み上げる智樹とノートに結果を書き込んでいく宏
日付 | 対象R | Race結果 | 払戻 | 的中判定 | 収支 |
---|---|---|---|---|---|
2025/8/6 | 7R | 125 | ¥840 | 外れ | -6000 |
2025/8/7 | 7R | 132 | ¥960 | 的中 | 3600 |
2025/8/8 | 7R | 145 | ¥890 | 外れ | -6000 |
2025/8/9 | 7R | 123 | ¥750 | 的中 | 1500 |
2025/8/10 | – | – | – | – | – |
2025/8/11 | 7R | 241 | ¥8,800 | 外れ | -6000 |
2025/8/14 | 7R | 142 | ¥1,530 | 的中 | 9300 |
2025/8/15 | 7R | 214 | ¥8,430 | 外れ | -6000 |
いざ検証!
全ての結果を書き終えた頃、店員が料理を運んできた
「お待たせしました。ハンバーガーとチキンコンボでございます」
「お、きたきた!」智樹は嬉しそうに声を上げ、ポテトをつまむ
肉汁があふれるハンバーガーに豪快にかぶりつき、片手でメモを指さす
「おい、結果だけ見たらマイナスだけど、もし3着も当たってたらプラスじゃないか?」
目を輝かせる智樹に、宏は皿の上のチキンコンボへナイフを入れながら応じた
「……確かに。けど、実際に3着まで全部当てるなんて、どうやるんだ」
宏はナイフを置き、チキンをひと口味わってから考え込んだ
「点数増やせば? って思うけど……」
「それだとガミるよな。払い戻しより投資がデカくなる」
「じゃあ絞れば?」
「外したら終わりじゃん」
言葉が途切れ、テーブルの上には揚げたてのポテトとチキンの香ばしい匂いが広がった
智樹は黙ってハンバーガーを頬張り、宏はチキンを切り分けて口へ運ぶ
互いに手を止めずに食事を進め、最後の一口を飲み込む頃には、少しだけ落ち着きを取り戻していた
食後のコップに残った氷がカランと音を立てる
ようやく智樹が口を開いた
「やっぱ、俺ら知識が足りねぇよな」
宏もうなずく
「そうだな。結局、競艇を知らなきゃ3着の精度なんか上がんねぇ」
二人は視線を合わせ、どちらからともなく苦笑した
「……勉強するしかねぇか」
「おう、まずはそこからだ」
ファミレスを出ると、成増の夜風がひんやりと頬を撫でた
駅の明かりが遠くに滲んで見える
胸の奥で、小さな決意の火がじわりと燃え始めていた


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