前回のあらすじ
パチスロのイベントで狙い通りい増台の「モンキーターンV」を確保し大勝した二人
帰宅途中の道すがら、突然智樹が競艇に突っ込んでみないかと言い出す――
危険!?な誘い
「なぁ、この金、競艇に突っ込んでみねぇ?」
唐突な智樹の提案に、宏は思わず足を止めた
「はぁ?競艇?……いや、俺やったことないし」
「大丈夫だって。俺の先輩が競艇にめっちゃ詳しくて、勝ってるらしいんだわ」
「んで必勝法ってのを教わってさ、試してみたいんよ」
「必勝法……?」宏はその響きに心を揺らす
ギャンブルで得た“あぶく銭”
どうせならもっと増やしたい、そんな欲が胸の奥で膨らんでいく
「……まあ、確かにな。これ全部、呑みに使うよりは夢あるか」
「そうだろ!15日バイト休みだし、近くの競艇場に行ってみようぜ」
二人は顔を見合わせ、悪ガキのように笑った
いざ!競艇場へ
約束の15日、二人は近くの戸田競艇場に足を踏み入れた
「ブオオォンッ!」――甲高いエンジン音が場内に轟き、水しぶきが太陽にきらめく
宏は初めて浴びる轟音に思わず身をすくめた
「うわ、すげぇ迫力だな……」
「だな。俺も生で見るのは初めてだからよ……ヤベーな、興奮してきたぜ」
ちょうど場内では5Rの真っ最中。観客のどよめきと甲高いエンジン音が、宏の胸をざわつかせる「なあ、それで必勝法ってどんなヤツよ?」
智樹はわざと周囲を見回し、声をひそめてニヤリと笑った
「……知りたいか?」
「もったいぶるなよ」
「いいぜ。心して聞けよ」
必勝法の解説
智樹「まずは公式サイトのレース一覧を見て、サービスレースを探す」
宏「サービスレース?」
智樹「ああ、競艇選手には4段階の級がある。A1・A2をA級、B1・B2をB級って言うんだ
それで1号艇にA級がいて、他が全部B級っていうのがサービスレースだ」

宏「あった!これじゃね、7R」
智樹「そう、それだ。競艇は1号艇が圧倒的に有利
1号艇が格上で、他が格下なら1着は固い」
宏「マジか!じゃあもう当たりじゃん」
智樹「まぁ待て。3着まで当てんだよ」
宏「えっ、そうなん!?」
智樹「3連単って言ってな、配当が一番デカい。その代わり難しいんだ」
宏「お、おう……で、続きは?」
智樹「5・6号艇は上手い選手でも入賞が難しい。だから切る
残りは2・3・4号艇だ。1着を1号艇固定、2着・3着を2・3・4で流す
つまり 1-234-234の6点だ」
宏「おお、簡単じゃん!」
智樹「だろ?これが俺の先輩直伝だ」
宏「いいねぇ……これならマジ勝てるかもしれん……」
競艇場は開催するレースに選手を斡旋し、事前告知を行っています
つまり“推されている選手”が1号艇かつA級だった場合、その選手が勝つ可能性はさらに高まります
腹ごしらえの時間
勝負の7Rまでには、まだ1時間近くある
二人は売店で焼きそばと名物の「戸田メンチ」を買い込み、レースを見学しながら最前列のベンチに腰を下ろした。「戸田メンチ」をかじった瞬間、熱々の肉汁があふれ出し、ソースの香ばしさと混じり合って口いっぱいに広がる
目の前ではモーター音が「ブオオォン!」と響き、水しぶきが太陽の光を反射して飛び散っている。その迫力と味が同時に押し寄せ、宏は競艇場ならではの熱気に体の芯まで包まれていくような高揚感を覚える ふと、早く勝負がしてぇ、と心の奥でつぶやくのだった
7Rまで残り20分。二人は券売所の前に立った
「で、どうやって買うんだ?これ」
「フッ、心配すんな。先輩から教わった通りにやりゃいいんだよ」智樹は備え付けの鉛筆を手に取り、マークシートを塗りつぶし始めた
買い目はもちろん「1-234-234」
「これで6点。1点1000円だから、合計6000円だな」
「えっ、いきなり6000円!?」宏の心臓は舟券を握る前から高鳴っていた
「当たればデカいんだよ。ここでケチったら勝負にならねぇ」
渋々同じようにマークシートを塗りつぶす宏。用紙を券売機に差し込むと、ガチャン!と音を立てて白い舟券が吐き出された
手にした舟券はただの紙切れなのに、妙に重みがある
「……これが舟券ってやつか」宏は思わず見入った
「そうよ、当たりゃ宝の紙切れだ」智樹はニヤリと笑う
7R――勝負の時
時刻は13時45分
隣のオヤジは新聞を丸め声援を送り、若者はビール片手に騒いでいる
場内は一様に高揚感に包まれていた
二人は必勝法を信じ、1-234-234の舟券を握りしめる
「いよいよだ、な」智樹も緊張しているのか、歯切れが悪い
心の中でつぶやく宏「よし……勝負の時だ」
ファンファーレが鳴り響く
二人の舟券は震える手の中で汗ばみ、次の瞬間――運命の水面が動き出した


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